料理雑感

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■本当は料理嫌い!?

 本当は趣味を「料理」とするのは抵抗があった。
 だって、わたしは台所に長時間立つなんて嫌いなんだもの。できれば一度に30分、長くても1時間以上台所に立ちたくない。
 でも、わたしが料理の話をしていると、周りに「お料理にまめねえ」と言われる。
 じゃあ食べるのが好きなのか?
 これもまた、うーん…。なにせ、ほっとけば2日間でコンビニおにぎり1個で済ませちゃう人間だ。
 わたしはグルメからも、名シェフからもほど遠い。

 「その割には毎日の食卓の品数は多いし、メニューの種類も豊富じゃない?」と言われるかもしれない。
 その理由は胃下垂(というのはただの状態を指すのよね)じゃなかった、胃アトニー(胃下垂で且つ痛みなどの症状があると、こう呼ぶ)にある。
 そこらの本屋で食餌療法の本を開いて、胃下垂もしくは胃アトニーのページを開いてみてほしい。すると、そこにはきっと載っている。「この食餌療法では雰囲気や気分も大切です」と。
 そう、胃アトニーの人間は、食事はイベントにしないと、食べられないのだ。楽しくて、見た目もおいしそうでないと、お腹が空かない。
 おなかが空かないからと食べなければ、延々食べずにいられる。そして胃が空っぽになって、胃を壊すだけ。
 あるいは栄養失調になる場合もある。元々、消化吸収力が弱いから、食べていても栄養不足になりがちだし。

 だから我が家のメニューは見た目を重視! わたしの場合、一品ドカッのメニューは見ただけで、食欲を失う。少しずつ、いろいろ並んでいると、食欲がわく。甘いもの、辛いもの、酸っぱいもの…と味もバラエティがほしい。
 でも調理に手間はかけたくない。だいたい胃アトニーになるような体質の人間は体力があまりない。台所に長時間立っているだけで、疲れて、食欲を失う。

 そんな、こんなで我が家のメニューは、実は缶詰や市販の惣菜も多い。
 包丁を使うのは好きなので千切りなど包丁を使う作業はするが「巻く」、「包む」、「衣をつける」なんてめんどくさいことはやらない。下ごしらえに手間がかかる料理はほとんど作らない。
 メニューの中のギョーザや茶碗蒸はすべて、焼くだけや温めるだけの市販品。
 自分で作る場合は、たいがいは「切って」、「火を加えて」、「味つけて」おしまい。
 料理に手間かけなくても、料理の組み合わせでおいしさと栄養バランスを取れば、それでいいじゃん!と思っている。

 これでも、あなたはわたしを「料理好き」と呼ぶ?



プロの料理は一期一会、家庭料理はバランス勝負。

 プロが一回まずい料理を出せば、その客は二度と来ない。だから毎回、一品一品気合を入れて作らなければならない。
 だが家庭料理は一度おいしくないと思われても、それで離婚だ、家出だ、別居だ、料理担当交代だ(となったらありがたいだろうが)…とはなるまい。毎回、全品お気に召してもらう必要などない。
 家庭料理の作る人と食べるひとの関係はながーいおつきあい。作って食べる自身なんて長いおつきあいの典型だろう。

 わたしは友人が結婚すると、女性の友人なら本人に、男性の友人なら奥様へ必ず贈る言葉がある。
「最初が肝心だからね、思いっきり家事は手を抜こう!」
 長くつきあいたければ、そのほうがいい。誰でも最初の経験を標準だと思いがち。
 まだ不慣れな内に必死にがんばった家事を当り前と思われて、やがて体力尽きた頃に「だんだん、いいかげんになってきた」などと言われたら頭に来る。
 だいたい最初は手抜きしても不慣れだから存分疲れる。慣れてきたら、同じ程度にがんばっても、うまくいく。だんだん落ちていくより、上がっていくほうが評価は高い。
 トータルの人生のバランスを考えてエネルギー配分しようということだ。
 料理もエネルギーのバランスを考えたい。

 こんな例がある。ふだん料理しない友人が彼氏に料理を作りたいと調理具を買うのにつきあった。彼女が玉子豆腐の型を買ったので
「えーっ!? あんな手間のかかるものは既製品でいいじゃない? あんた、それ作ったら、手一杯になるんじゃない?」
 案の定、後で聞いたら、卵豆腐を作って出すと彼から
「タレは?」
「それだけ作ったら、くたびれちゃった。タレはなし!」
 当然、他の料理も一切なし。
 まあ、これは極端な例かもしれないが、たとえば晩ご飯だけ豪華よりも、朝から何品も並べるほうが、また1点豪華の食事よりも色、味、調理法にバリエーションがあるほうがあらゆる意味でお得。

 まず食べるひとの評価が高い。
 栄養バランスがいい。
 ダイエットもしやすい(詳しい話はまた後日別に書こう…は、やがて1冊のダイエット本を執筆後の次なる雑感となった)。
 調理も楽になる。

 「えーっ!? いろいろ作ったら大変じゃん!?」

 ところがそうでもない。皿数が多ければ、大半が既製のおかずでも豪勢に見えてしまう。
 また、たとえば揚げ物ばかりのメニューを全品、熱々で出すのは家庭じゃまず難しいが、和え物と揚げ物なら和え物を先に作っておけるし、揚げ物と煮物なら揚げ物は1分早くても遅くても失敗だが、煮物は1分ずれても充分おいしいから同時に作り上げるのも楽。

 家庭料理は息長く続けられるバランスで勝負しよう。




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