勤め人は会社が随分いろいろなお金を払ってくれていることを忘れがちです。会社イコールであるSOHOの場合、社会保険料は勤め人をはるかに上回ります。
ここで勤め人とSOHOと同じ収入で実質手取りを比較してみましょう。(2001年7月当時)
どちらも収入は660万円。
勤め人は月収40万円、ボーナスが90万円ずつ2回。
SOHOは月収55万円。
よく月収を聞いてSOHOのほうをリッチと思うひとがいますが、勤め人にはボーナスもあれば退職金もあることをお忘れなく。
これから下の表のように経費(SOHOは少なめに見積もったが)や社会保険料、税金を引いていくと……
実質の手取り額は
勤め人は……5,310,692円
SOHOは ……3,134,262円
勤め人はさらに退職金もつくし、失業すれば失業保険がもらえます。SOHOにはそんな保証はありません。
しばしば言われることですがSOHOは勤め人の2倍〜3倍の年収でやっと同程度になります。
勤め人の手取り計算 |
収入 |
\6,600,000 |
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所得=給与所得控除後 |
\4,740,000 |
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健康保険月額 |
\17,425 |
健康保険料ボーナス時合計 |
\5,400 |
健康保険料年額 |
\214,500 |
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厚生年金保険料月額 |
\19,660 |
厚生年金保険料ボーナス時合計 |
\9,000 |
厚生年金保険料年額 |
\244,914 |
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雇用保険 |
\29,268 |
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社会保険料合計 |
\488,682 |
|
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課税所得 |
\4,251,318 |
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所得税 |
\520,264 |
住民税 |
\280,362 |
|
|
手取り=収入-社会保険料-所得税-住民税 |
\5,310,692 |
SOHOの手取り計算 |
収入 |
\6,600,000 |
経費(勤め人に認められるのと同額で見積) |
\1,860,000 |
所得 |
\4,740,000 |
|
|
国民健康保険料 |
\368,000 |
国民年金保険料 |
\159,600 |
国民年金基金=Aタイプ基本一口+15口 |
\905,040 |
社会保険料の合計 |
\947,760 |
|
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課税所得=所得-社会保険料(基金は月額68,000円が控除の限度)-基礎控除38万円 |
\3,316,280 |
|
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所得税=課税所得*20%-33万円 |
\333,256 |
住民税 |
\200,884 |
|
|
手取り=収入-経費-社会保険料-所得税-住民税 |
\3,134,262 |
■1年は利益が出ないSOHO
アルバイトや派遣では未経験でも初日から稼ぐことも可能ですが、SOHOの場合は最初は経費ばかりがかかり、1年目はまず赤字です。
特に未経験者も可能とされる入力系、OA系では数年立っても赤字のケースが多く、「もうかっているひとがいたらお目にかかってみたい」などという言葉もよく聞きます。
仕事先に出向くか、在宅で仕事するかで、この差が出ます。
なぜ在宅ではなかなかもうからないのか、仕事を出す側の視点に立って見てみればわかります。
SOHOへの発注にはデメリットが多くあります。
1)時間がかかる
目の前にいればすぐ仕事を渡して、すぐ始めてもらえますが、SOHOの場合は資料の手渡しなどに時間がかかります。
2)手間がかかる
SOHOに仕事を依頼する場合、何をどうしてほしいのか、最初に全容を明確にしなければなりません。内部にいる人間になら、とりあえず仕事を始めさせておいて、次から次へと資料や指示、作業をどんどん追加することもできますが、SOHOの場合はなかなかそうはいきません。スケジュールが最初にある程度目安が立ち、材料もそれなりに渡せなければ、なりません。
3)絶体絶命に陥る危険
SOHOの場合、途中段階ではあまりチェックできません。そのためかなり時間が立ってから「できませんでした」と言われたり、つくってきたものを見たら全くまちがっていたなどが起こり得ます。
最後の最後に問題が判明した場合、重大な事態となります。
それでもSOHOに依頼するには理由が必要です。
1)専門的知識や技術
社内で育てたり、維持するにはお金がかかりすぎる専門的知識や技術を持つSOHOになら発注します。
2)安価
手間も時間もかかる以上、アルバイトを雇ったり、派遣社員を頼むよりも安さを求めるのは当然です。
OA作業料金は派遣社員などとは比べ物にならないくらい時間単価は安いと考えてください。それを補うには、通勤時間の無駄のない分、たくさん実質労働時間を増やすことですが、この分野は競争が激しく、量が多くは手に入りません。
未経験でSOHOを目指すひとは数年後に専門的知識や技術で稼げるプロフェッショナルになることを目指すべきであり、すぐにお金が必要なひとはSOHOになるべきではありません。
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■能力が上がれば収入が減る現実
SOHOは自営業。自営業に年功序列による収入アップはありません。
能力が上がればこなせる量が増えると言っても限度があります。一人でこなせる量など、すぐに頭打ち。それどころか年齢が上がり、体力が落ちれば、仕事量は減ります。
「でも能力が上がれば単価が上がり、収入は増えるだろう」と思っていないでしょうか?
実は逆。
「能力が上がって単価が上がると、収入は減る」これが現実です。
腕が上がり、単価が上がると、仕事が減ります。仕事を出す側はそれなりでもいい仕事まで、単価が高い相手には出しません。「高い金を払ってもこのひとに頼みたい」仕事しか出さなくなります。単価はせいぜい最初の2、3倍までしか上がりませんが、仕事量は平気で5%とか10%に減ってしまいます。
1社とだけ仕事していた場合、単価が上がれば、まず収入が減ると思って間違いありません。
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■収入増のためには取引先をランクアップ
同じ会社と仕事をしていたら、能力が上がると収入が減ってしまいます。
そこで取引先自体を変えなければいけません。
同じランクの会社では出してくれる仕事量は変わりません。
取引先のランクアップが必要です。
たとえば最初は孫受けで仕事をしていたなら、次は直下の下請、その次は直で仕事…とランクアップしていけば、高い単価でそれなりの量の仕事も手に入れられるようになります。
ただし、これまでの取引先関係でのランクアップはなかなかできません。
もちろん上位のほうから指名で仕事が来る場合もあります。わたしもコピーライターとして広告プロダクションと仕事していて、プロダクションに対する発注者である広告代理店から「別件で仕事を頼みたい」と直で仕事が入るようになった経験を持っています。
このように相手側から申しこまれた場合には受けても、おおむね許されます。これまでの取引先が不満を持ったとしても、取引先の上位の側からの希望では仕方ないと考えるからです。
しかし、こちら側から売りこむことは絶対に許されません。
これまでの取引先に対して仁義に反する行為であり、ときには業界から締め出される結果となります。
ランクアップするためにはこれまで全く取引のないところで新たに取引先を開拓しなければなりません。
売込ノウハウについては次回お話しましょう。
またこの他の収入増加方法「使いまわせる資産づくり」、「上位職への転職」なども次回書きます。
受注者と発注者の出会いの場などの紹介は
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■仕事獲得方法の現実
SOHOになりたいひとが考えている仕事獲得方法と、現実の仕事獲得方法には大きなギャップがあります。
2000年の夏、そほっとWebサイト(元http://www.iodata.net/sohot/index.htm。現在は閉鎖されています)が行なったアンケートによれば、未経験者の4割は在宅ワーク管理会社から仕事がもらえると思っています。ところが現実にはそうやって仕事を手に入れている人は1割だけ。最も多い仕事獲得方法は知合いからの受注です。
もちろんSOHOの仕事と言ってもいろいろあります。
インターネットショップのように、あらかじめ生産や仕入れして販売を行う事業の場合は、そもそも商品準備前に需要を考慮、販売ルートを確立しておかなければなりません。作ってしまってから売り方を考えていたのでは遅すぎます。
コンピュータ出張サポートやスクールなど、売るものがサービスの場合も同様です。
最も多くのひとがイメージしているSOHOは受注型の仕事。この場合は結局は頼りになるのは人脈です。
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■SOHO最大の財産は人脈
■1年は利益が出ないSOHOで書いたように、SOHOに仕事を出すのはリスクが大きいので、企業は仕事を出す側は基本的に知っている相手、信用できる相手に出そうとします。初めて仕事する相手であっても、紹介なしで仕事を出すことはめったにありません。
そこから多く稼いでいるひとたちは自分の信用で仕事をまるごと受けて、下請に出す構図が見られます。グループSOHOです。簡易なホームページ制作を含めた入力系の仕事の多くがこのスタイルで行われています。
入力系の仕事でそこそこ稼いでいるひとは要するにグループSOHOの元締めです。
SOHOをとりまとめる会社、いわゆる在宅ワーク管理会社もこのスタイルの発展形として存在しています。
人脈があれば、それだけでかなり稼ぐことが可能になります。
受注系SOHOにおいて、個々の仕事のエキスパートであることよりも、人脈を持っていることのほうがより重要なのです。
クリエイターの世界など、一般に「実力の世界」と呼ばれる世界はそのまま「ツテ・コネと運の世界」と考えてください。実力を発揮するには、発揮できるチャンスを得なければなりません。ツテ・コネと運はチャンス獲得に必須です。
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■SOHO元締めたちの仕事
これらの元締めはかなりのマージンを取ります。しかしそれだけの仕事もしています。
(1)まず発注者との金額交渉から請求、取り立てなどを行います。
SOHOの仕事におけるトラブルは詐欺などばかりではありません。
件数的に最も多いトラブルは最初の約束と異なる範囲の仕事までやらされたり、約束よりも少ない金額しか払われないといったトラブルです。
こういったトラブルに関しては、相手が名が通った企業であるか、無名であるかは関係ありません。むしろわたしの経験的には名が通った大手企業ほどトラブルが多いと言ってもいいでしょう。それは大きな企業相手には出入りしている会社がしばしばムリしてサービスで余分な仕事をしたり、約束外の値引きを受け入れるからです。損した分は長い付き合いの中で取り戻せるという判断があります。しかし、そのとき恩を売っておいて、後で取り戻すという長期戦略と体力を持てるSOHOは少なく、泣き寝入りになりがちです。
従って、金にまつわる交渉と取り立てを代行してくれることは大きな価値があります。もちろん元締めが泣き寝入りしてしまうこともあるので、確実ではありませんが、それでも交渉など相当のエネルギーを要する部分を任せられることは大きいでしょう。
(2)原稿統一やミスチェックを行って、納品に責任を持ちます。
仕事を受けた後、納品まで何も疑問が出てこない仕事はめったにありません。大概は表記の統一ルールづくりや、例外事項の処理判断が必要になります。
元締めは個々のSOHOからの細かな質問などを取りまとめ、発注側がひとりひとりに対処しなくても済むようにします。手馴れた元締めなら、逆に発注側に対して、それらの処理の方法を提案することもあります。発注者側から見た、SOHOを使う、わずらわしさを減らします。
また各SOHOもミスなどのチェックをすべきですが、やはりひとりの目では見逃されることも多く、元締めはさらなるチェックをした上で、各SOHOに戻す時間がない場合には自ら修正作業なども行います。
どたんばになって「できませんでした」というSOHOも少なからずいます。従って元締めは実際のギリギリの締切より早めに締切を設定したり、中途でチェックするなどして、完成できないだろうものを早めに発見して、代わりの者に仕事を回したり、自らその分をかぶって、最終締切には必ずまちがいない内容で納品します。
元締めの仕事が決して簡単なものではないことがおわかりいただけたでしょうか?従って元締めが相当のマージンを取るのも致し方ないこと。
しかしマージンばかり取って、仕事はほとんどしないひと、誰かに丸投げしてしまうひとなどもいます。
SOHOネットワークなどへのリンクは… 【SOHOに役立つリンク集No.1「仕事探し」】
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■信頼できるSOHO元締めの探し方
信用できる元締めはいかにして探せばいいのでしょうか?
はっきり言って決め手はありません。
まずは仕事紹介しているSOHOネットワークのメールマガジンをいくつか購読して、しばらく読み続けましょう。紹介されている仕事内容を見ていれば、危なっかしそうな内容や、まともな仕事でも量が少ないなどによって、ある程度判断がつくようになっていきます。
またSOHO関連のサイト、特に掲示板をのぞきましょう。悪い噂は巡るものです。著名なSOHOでも悪い噂が巡っているひともままいますので、しっかり調べておきましょう。
トラブル0なんて不可能だと思ってください。
失敗し、だまされて、目を肥やし、勘を身につけていかざるを得ません。それがSOHOという自営業の宿命です。
わたしも毎年、企画を詰めるところまでやったのに結局金にならずに終わる仕事が何本もあります。
損金は常に発生する前提で仕事しています。
知っていればだまされない… 【SOHO詐欺防衛策】
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■SOHO元締めたちとの上手な付き合い方
元締めやSOHO管理会社との賢い付き合い方を考えましょう。
内職的に仕事を得たいと考えているひとは負担やリスクが少ないので、元締めの元で仕事をするのも悪くありません。ただし、はっきり言って、ほとんど利益は出ません。元々必要なマシンやソフトは揃っていて、新たな投資は不要ならまだいいでしょう。ともかく経費をかけないようにすべきです。
また、なかなかたくさんの量は望めません。金額的には月に数万円、それも継続的ではなく、ときたま思い出したように来るといった程度にならざるをえません。
金額だけで言えば、インターネット上のリサーチモニターのほうがまだ稼げます。
本格的に仕事をしたいと考えているひとでも未経験者で、ツテやコネもなければ、最初は元締めと仕事するのもやむをえません。
経験を積むなら、派遣やアルバイトのほうがより早く、より良く経験を積めます。しかし、近くに仕事がないなど、それらを利用できないケースもあるでしょう。また派遣などで経験を積んでも、それらの経験の間に取引先を開拓したり、見せられる実績を作れなければ、最初はとりあえず元締めの下で仕事をする必要があります。
仕事をする中で、さまざまなノウハウを身につけ、できるだけ少しずつでもまとまった仕事を受け、自ら発注者と会える機会を少しずつ手に入れていきましょう。もちろんこちらから、持ちかけて得意先を奪うことは許されません。しかしきちんとした仕事をしていけば、評判は自ずから広がっていき、向こうから仕事が持ちこまれるようになります。
また個人の元締めでそこそこ仕事があるひとなら、自分だけではさばききれない仕事を回してくれる場合もままあります。相手のほうからノレン分けしてくれるように、元締めの信頼を得ていきましょう。
下手な入力作業より稼げるリサーチモニターになるには… 【ネットで小遣い稼ぎ】
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■常に頭にキャリアアップの意識を
わたしが勤め始めた頃の広告業界では転職しながら自分のキャリアを積み上げていくのが常識でしたし、広告プロダクションは給料もきちんと払われるか怪しい会社が多く、体を壊せばそのまま退職を迫られることが少なくありませんでした。
誰も会社があてになるなどとは思っていませんでした。
だからわたしは会社時代からひとつひとつの仕事に対して、その仕事が自分のキャリアにどう役立つかの意識を持っていました。
稼げる仕事は会社での評価、フリーになってからは収入になり、新たな仕事は自分の経験と実績づくりに役立つもの、金にも経験にもならない仕事でも誰かに恩を売れる仕事……仕事を自分の中で分類、位置づけしていました。
こういった意識は重要なことです。
稼げる仕事は徹底して効率的にやるべきでしょう。
経験になる仕事の場合はせっかくの機会にあれこれ調べたり、たずねたりして、自分の知識や技術向上に役立てます。
実績づくりに役立つ仕事の場合はできれば自分の名前が表に出る形にしてもらえるよう交渉します。
誰かに恩を売れる仕事なら、相手にきちんとそれが伝わるようにしなければなりません。もちろん相手が逆に恩を売ってやっているつもりなんて場合もありますから、相手との力関係を見定めつつ、どこまで相手に恩を感じさせるような言動を取るべきか、よく考えます。
目の前の仕事をただ片づけていたのでは、キャリアは積めません。すべての仕事を明日のあなたの価値を高めるために利用してください。
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■きちんと仕事していることが一番の営業
わたしが勤めていた頃、フリーランスの友人から「あんたもフリーになったら?」と勧められても断っていた理由は「営業ができないから」でした。
当時のわたしは営業という言葉を随分狭く捉えていました。バナナの叩き売りや押し売りセールスマンのように、「買ってくれ!」とアピールして歩くことをイメージしていました。でも考えてみれば、ふだんつきあいのある大手広告代理店の「営業」の仕事は単なる売り歩きではなかったのに……。大手代理店のエース級営業は、たとえば地方博での企業館のプロデュースを行ったりしていました。お得意先にとって必要なものを考えたり、探って、それを提供すること、そのための手配すべてまでが営業の仕事でした。
フリーランス系SOHOの営業も、仕事がなくなってから「仕事ください」と行って歩くなんてのは後手後手に回った営業と言わざるを得ません。仕事がなくならないように、しっかり取引先との良い関係を構築し、仕事を創出しておくべきなのです。
実際にわたしがフリーランスになってみると、イメージしていたような売り込み営業など一切不要でした。下戸でつきあいも悪いのに、会社時代は社長や上司から常に「おまえは愛想がない」と言われ続けていたのに、ほとんど仕事が絶えるようなことはありませんでした。
きちんとした仕事をして信用を獲得すれば、自然と仕事相手が他を紹介してくれたりして、仕事は入ってくるものです。また、仕事時のちょっとした雑談で、相手が困っていること、求めているものを聞き、それに対して企画などを提案することで、新たな仕事が発生することもよくありました。
「きちんと仕事していることが一番の営業」
これが実感です。
ただ交通事故で仕事を1年近く休んだ後、痛い目に会いました。休んでいる間に、わたしがやっていた仕事は他のひとへ移りました。また、それまで仕事をくれていた相手が会社を辞めると、そのまま、その会社とも縁が切れてしまいました。仕事をしているときなら、相手が辞める際に次のひとに引き継ぎでわたしを紹介してくれますが、仕事してないとそれきりです。
不景気が深刻になり始めた頃で、取引のあったプロダクションが次々つぶれたことなどもあり、休業後に気づいたら、数十社あった取引先が数社に減っていました。
休業して「仕事してないと取引先が減る」体験をしたことによって、逆に「きちんと仕事していることが一番の営業」を実感させられました。
取引先を増やしたいときは登録サイトなどを活用しましょう
↓↓↓
【SOHOに役立つリンク集No.1「仕事探し」】
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■最強の信用獲得術「約束厳守」には「能力把握」が必須
仕事相手から信用を得るために一番重要なことは約束を守ることです。あたりまえのことのようですが、意外にこれが簡単なことではありません。
「約束厳守」に欠かせぬ能力は自分の「能力把握」能力です。自分がどのくらいの早さで、どのくりの量の、どのくらいのレベルの仕事をこなせるのか……これは現実の仕事を経験しないと、なかなか把握できません。わたしが未経験でいきなりSOHOになるのは難しい、独立前に経験を積むべきだと思う理由もここにあります。
学校の課題で自分の能力把握できたつもりになりがちですが、現実の仕事は学校の課題のように必要材料や情報が揃わない場合がほとんどです。発注時にあれもこれも不足したまま見切り発車しなければならないことが少なくありません。その時点でできるか、できないかの見当をつけることを求められます。
できるかどうかの判断はかなりのベテランになっても難しいものです。
わたし自身、できるつもりでできなかったことはままあります。
しかし、仕事単位で請け負い、途中経過は見てもらえない、結果だけで評価されるSOHOにとって、約束を守れるかどうかの判断力は一番大切な能力です。仕事ごとにどういう条件下ではどのくらい仕事が可能だったかを常に記録するなり、覚えるなりして、判断材料を集めていきましょう。
実践で経験を積める派遣やバイト探しは……
【SOHOに役立つリンク集No.1「仕事探し」】
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■約束を守れなくても信用を失わないために予防線
余裕しゃくしゃくで約束を守れる自信があればよし、逆に絶対にムリなら、そう断るしかありません。でもギリギリの線で難しいときはあらかじめ予防線を張っておくことで、信用を失わなくて済みます。
もちろん予防線を張ることは賭けです。「難しそうだ」と言えば、「じゃあ他に頼むよ」と言われてしまう危険があります。しかし、そう言われたとたんに「あ…やっぱり大丈夫です。できます、できます」などと言を翻すことだけはしてはいけません。「いいかげんなことを言ったな」と信用を失います。依頼を引っ込められた場合は「今回はお役に立てなくて済みません」と謝りつつ、あっさり引き下がりましょう。
予防線を張り、ときには「できない」と断ることによって、逆に「できないことはできないときちんと言ってくれるSOHOだな」と信頼してもらえます。「NO」が言えない人間は信用されません。
たとえば既に他に仕事が入っていて、スケジュール的にきつそうな場合は必ず予防線を張っておくべきです。依頼が来た時点で、まず仕事を依頼してくれたことに十二分に感謝の意を示しつつ、実は既に別の仕事が入っていて、この分量、あるいはこのスケジュールでは難しいかもしれないと相手に伝えましょう。
こういったケースで黙って引き受けて、締切を過ぎてから、別の仕事をいいわけにすると、相手に「他の仕事を優先させて、自分のところの仕事を後回しにしたな」と激怒させることになります。絶対に後では言訳に使ってはいけません。必ず最初に伝えておくこと。そうすれば単純な先着順の問題として、相手は納得してくれます。やれるつもりでいたのに、約束を守れなかった場合には、言訳をしないことです。
内容的に自分でやれるかどうか自信が持てないときは「自分がその仕事に関わる能力でここまではできるが、ここから先はこれから勉強しなければならない段階である」など、きちんと伝えておきましょう。「その部分はこれを参考に」など相手が資料や参考例を教えてくれる場合もあります。また経験がないと難しいものなら、部分的に他のひとと分担できるように手配してくれる場合もあります。ともかく事前に相手とよく相談することです。
能力的なものに関しては、100%できることだけ受けていると、ステップアップできません。かといって自分の能力とかけ離れた仕事を引き受ければ、約束を守れずに、信用を失います。自分の能力の120%くらいの仕事を時折受けるようにしていくのがベストです。
仕事をしていくに際しては常に勉強が必要です。しかし、あらゆることを勉強している暇もありません。
そこで基本姿勢として、関連雑誌や関連メルマガなどをざっと斜め読みして、自分の仕事関連のニュースには常に網を張って、目を通しておき、必要になったときに、どこで情報を得られるか、どこで調べられるかを知っておくようにしましょう。その中で特に注目すべきものがあったら、専門書などを取寄せて、時間のあるときに学ぶと良いでしょう。
専門雑誌、情報サイトの案内は……
【SOHOに役立つリンク集No.2「仕事道具や資料の購入」】
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■約束を守るためには仕事全体をコントロール
わたしがある雑誌の仕事をしていたとき、周囲のライターは締め切りを破るのが常態となっていました。
「だって締切日にやっと資料が来たら、締切を守れっこないじゃない? あなたは運がいいだけじゃないの?」
締切を守り続けていたわたしは他のライターにそう言われたことがあります。
「運だけじゃ、何年も続くわけないでしょ? 編集者任せにしてたら、絶対守れないようなムチャなスケジュールになるわよ。だからわたしは編集者任せにしないの」
その仕事にどんな情報が必要か、それがいつまでに手に入らなければ困るか、それらを判断して、遅れているとみなすと、わたしは発注者、この場合は編集者の尻を叩いて急がせました。ときには編集者の許可を受けた上ではあるものの、編集者を飛び越えて、相手先に直接連絡をすることもしばしばでした。
通常ライターは編集者がこちらの尻を叩くべきであり、編集者が催促しなければ遅れて当然、催促しない側が悪いとさえ思うライターまでいます。ライターに限らず、発注者と受注者の関係でこう考えるSOHOは多いのではないでしょうか?
締切だけではありません。仕事結果が悪かったり、まちがった場合、あるいは違法や仁義にもとることをした場合にも、発注者がくれた情報不足や指示のせいにしがちです。
しかし結果として約束が守れなかったり、不法行為などをすれば、仕事したひとの責任は免れません。いちいち、あらゆるひとに「ああなったのは誰の責任」などと言訳して歩くことはできません。悪い結果を出した噂だけが業界内で一人歩きすることもままあります。
すべてを発注者任せにしてはいけません。発注者のいいなりになってもいけません。常に自分自身でも仕事全体に目を配り、判断し、動きましょう。
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■失敗したときのフォロー
完璧なひとはいません。誰でも失敗します。おっちょこちょいで知られるわたしなんて何度失敗をしてきたことか…。
失敗したときの対応には人柄がよく表れますよね。わびる前にまず言い訳するひと、なんとかごまかそうとするひと……失敗よりも、むしろ、その後のフォローの悪さで信用が失われることのほうがはるかに多い気がします。
逆にきちんとしたフォローをすると、むしろ、その機会に見直してもらえる場合があります。
わたしのこれまでの経験からすると、失敗したときのフォローのポイントは以下のようになります。
1)下手な言い訳はしないこと。
理由なんて関係ありません。失敗は失敗。どんな理由があろうと、相手が受けた迷惑はなにも変わりないのですから。言い訳されると、不快に感じている自分のほうがいけないような気にさせられて、困惑し、さらに不快になるものです。
2)早めに失敗を伝えること
なんとかごまかそうと先延ばしにせず、早く、見極めをつけて、失敗について相手に伝えること。納期に遅れる場合など、そのことを早く伝えれば伝えるほど、相手に与える被害を小さくできます。
3)わびるだけでなく、フォローすること
単なる「ごめんなさい」で済ませず、できる限り、失敗に対するフォローをしましょう。たとえばウイルスなら、相手にワクチン情報などを伝えたり、自分が約束どおりの仕事をできなくなった場合ならピンチヒッターを紹介するなどしましょう。
4)できることとできないことをはっきりさせること
フォローに当たっては、どこまでができるのか、どこからができないのか、はっきりさせましょう。できないことを伝えることで、相手はその後の対応策を的確に考えることができます。
5)今後について伝えること。
たとえばウイルスで迷惑をかけた場合などは、自分がその失敗を二度と繰り返さないためにきちんとした対策を取ったことを伝えることで、信用が取り戻せます。単にわびただけでは、相手は今後を思って不安を感じるでしょう。
ともかく大切なことは、できる限り相手側の被害を食いとどめるためにできることをすることです。言い訳やごまかしは自分勝手なひととして、相手の心証を害します。
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■おわびは反省から
なんでもわびればいいというものではありません。たとえばウイルスを送った相手からそのことを伝えられたとき言うべきことは、まず「教えてくださって、ありがとうございます」でしょう。
「怒ってますよね。ごめんなさい、ごめんなさい」なんてわび方は最低です。「あなたはカッとしやすい感情的な人間ですね」と言っているのと同じになります。親切に対して、失礼を返さないようにしましょう。
わびの基本は反省でしょう。相手が怒っているからわびるのではありません。自ら振り返ってみて、申し訳ないという気持ちを表すのがおわび。悪くないと思いながら、謝ってみせるのは失礼以外のなにものでもありません。
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■売り込み上手は聞き上手
営業というと、立て板に水のしゃべりで相手に売り込むイメージを持ちがちです。わたしもかつてはそうイメージしていました。確かに玄関先でまくしたてて強引に売り込む押し売りのような商法ならそうかもしれません。しかし詐欺でさえ、長期に渡り、高額を巻き上げるような巧みな詐欺の場合には、被害者は「よく話を聞いてくれたから」と言います。長くつきあえる人間関係を構築しようと思うなら、一番大切なことは聞き上手になることです。
すべてのひとが自分の考えや気持ちを聞いてもらいたがっています。あまり自分から話さない人、口が重いひとほど、聞いてくれる人を切望しています。口下手で伝えられないとあきらめているひとから言葉を引き出し、相手が自分の思いを伝えられたという満足感を感じさせられたら、そして相手の望みをかなえたなら、その相手はあなたの大得意様になってくれるはずです。
また一緒に仕事する仲間の話をよく聞き、相手の力を最大限に引き出し、チームで良い仕事をすれば、あなたの評価も上がります。
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■思い込みを捨てることが聞き上手への第一歩
聞き上手のコツは思い込みを捨てること。
有名なテレビキャスターなどの中にも、いつも結論を決めてしまっていて、インタビューの際にも自分の考えを一方的に述べて、相手に同意だけを求めているひとがいます。こんなのは言語道断。
でも、当人は相槌を打っている程度のつもりで、勝手に話を奪っているひとも少なくありません。話をまとめようとしないことです。
自分勝手な解釈を相手に押しつけている場合もあります。相手に相手が話したい順番で話させましょう。相手の気持ちを決めつけてはいけません。
たとえば相手が怒っていると感じたときなどはよくよく冷静になって、自分が感じたことが真実かどうか考え直しましょう。相手が親切で注意してくれたときに、怒られたかのような態度を取ったら、相手はがっかりします。
またひとはそれぞれ価値観もちがいます。自分が良いと思って親切のつもりでやったことが、相手を上から見下ろした態度となる場合もあります。
自分がどう思うか、自分がどう感じるかではなく、相手がどう思い、どう感じているか、相手の側に立って見ることがなにより大切です。
これは聞き上手のコツだけではありません。顧客のニーズ掘り起こしにも通じることです。他人の視点で見ることができる能力はあらゆる仕事で強みとなります。
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■中元や歳暮よりも記念日メール
2003年秋、阪神球団が優勝しました。わたしは阪神ファンではありませんが、テレビで「阪神優勝!」のニュースが流れると、すぐにわたしはパソコンの前に駆け寄り、友人、知人の阪神ファンに「阪神優勝おめでとうございます」のメールを送りました。
経費もあまり使えないSOHO。
中元や歳暮はお金がかかる割りに、案外、効果がありません。相手の好みに合わなければ迷惑なだけですし、会社などでは総務などが受け取り、肝心の発注してくれる担当者は送られてきたことも知らなかったりすることもしばしば。
わたしが出入りしていた雑誌編集部ではシーズンになると、ライターも参加したくじ引きで贈答品が分配されていましたから。
中元や歳暮を贈るより、相手と話しているときに、なにげなく相手が話した好きなスポーツやごひいきのチーム、趣味、お子さんの誕生日といった記念日などを覚えておいて、適切なタイミングでメールを送ったほうが、ずっとインパクトがあります。
オンラインショップでもよくアンケートで顧客の誕生日を聞きっぱなしにしている例を見かけます。誕生日の月だけの割引やプレゼントで顧客を誘うなど、きちんと有効利用したいものです。
スケジュールソフトや、記念日メールサービスなどを利用すれば、記念日を忘れずに済みます。
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文責&著作権者:森田慶子
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